フランスの建築設計業界事情 その1

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私の友人がフランス人建築家と結婚してフランスに住んでいるのですが、里帰り中に、自宅へ遊びに来てくれました。うちの旦那さんも交えて、色々お話したのですが、話題に出た設計業界について少し書いてみます。ずっと通訳状態だった友人のあっちゃん、お世話かけました。

  • 建築家の資格と、業務範囲

日本では、1級建築士か2級建築士でしか設計できない建物、及び1級建築士でしか設計できない建物の規模が、用途や構造形式によって決められています。(例えば学校や劇場などは、30平米を超えると2級、500平米を超えると1級、木造ので高さが13m超えたり、RC造や鉄骨造では300平米を超えるもの、延べ面積が1000㎡を超えて2階以上のものは1級、延べ面積が100平米を超えるものは2級、等々。)ですが、建築士事務所に一人資格者がいれば、その人の責任の下で、資格の無い人が実務作業をすることが可能です。

また、日本では、ヨーロッパに比べて、建築士資格が簡単にとれるのでは、と私は思います。例えば、受験資格の貰える大学教育を受ければ、実務をしたことがなくてもペーパーで学科と設計が合格すればよいとか、大学で理論を勉強しなくても、上記のように建築士事務所で実務を決められた年数積み(積んだという証明がもらえればいい。仕事の内容までチェックが無い。)、建築士の試験のための予備校のようなところで試験勉強して合格する、というパターンもあります。

だから、建築士にもいろんな人がいて、設計業務に関して、さほど情熱も向上心も無く、とりあえず、仕事を請けるために資格をそろえておき、来た注文をそこそここなす、という仕事をしている人もいるわけで、本人に悪気があるかないかはおいておいて、例えば、その建物を建てることで、町並みがどのように変わるか、本当にそこにその建物をたてていいのか、とか、使用する人にとっていいものなのか、という議論が抜け落ちている、あるいは、その議論の能力を持ち合わせていない(今までそういう作業をしたことが無いので)、また、生活の為に、数をこなしている、というようなケースが多く起こっているのでは、と思うのです。その結果が、いまの日本の、ひどい町並みをつくる1つの原因ではないか、と感じています。

もちろん、逆に、どんな風な経歴を経て資格をとったかに関わらず、或いは、建築士の資格のない建築家でも、設計に関する能力が高く、ペーパー建築士とは別次元といえる、いいものを造る人もいます。

一方、ヨーロッパ、特にスペインやイタリアでは建築家の資格を取るのが非常に難しく、日本で言うと、医学部並みの年数、教育や研修を受け、学ぶ科目も哲学から何から、かなり広範囲で、建築家は尊敬されうる職業だと聞きます。フランスではどうかと聞くと、年によって、試験制度は変わるけれど、大学の教育はもちろん、自分の責任でまとめたプロジェクトをプレゼンしたり、かなり理論面を重視されるそうです。

フランスでは、175平米を超えるものはすべて資格をもった建築家が設計することになっているそうです。逆に言うと、それ以下のものは、資格がなくても設計できる。だから、一般の住宅会社は、資格のある建築家なしで家をたてることができる。その辺りがフランスでも少し悩みの種のようで、日本と同様、どこでも同じような、地域性を無視した住宅や、設計内容の質にもこだわらない住宅が郊外にどんどん建っていて、あまりよくない街づくりになっているところも増えているということです。

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