フランスの建築設計業界事情 その3

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設計料と労働時間について少し。

前エントリで、フランスの設計料と日本と、同じぐらいのようだ、と書きましたが、大きく違う点がありました。

それは、コンペ案に対する報酬です。日本では、指名コンペでも、当選案以外に報酬が貰えるコンペは少ないのです。当然、一般公募の、たくさんあるコンペやプロポーザルは、当選案以外に報酬は無いのが当たり前。仕事を取るために懸命にコンペやプロポーザルに応募しても、採用される一者以外は、費用は全て、持ち出しになります。

だから、通常の業務で、コンペをやるだけの余分を稼ぎつつ、通常業務以外の時間でコンペをやることになる設計者がほとんどだと思います。私の行っていた設計事務所は、平日は連日終電帰り、通常業務でも土曜日曜でてきても当たり前、のような風潮があって、コンペは合間を見てやりなさい、という感じでした。

フランスでは、指名コンペの場合は、当選者以外にも普通報酬が出るらしい。彼の所属しているのは、純粋なコンペチーム。コンペばかりして、仕事を取る部署で、30人ぐらいいるらしい。彼が勤めているのは設計だけ(ゼネコンでない。施工部門が無い。)の会社なので、純粋に設計料だけで、コンペチームが成り立っていることになります。1つ応募して500万円くらいあるらしいです。日本では、形の見えない「考える、案つくる」という作業への評価がやっぱりまだ低いですよね。

彼によると、労働時間は、なんと、週に35時間法定どおりらしい。法規で決まっているから、それ以上働けないんだ、とか。日本の設計事務所では法定時間が何時間か、気にしたことが無いくらい、無意味な法律で、もちろんサービス残業当たり前の世界。上記のように、コンペをしようというなら尚更サービス労働です。

まあ、長時間働く日本の設計業界はそれ相応の成果があるという考え方ももあるで、その是非はおいておいて、設計業界以外をあわせて考えても、どう考えても、日本では皆こんなに働いてやっと人並み(?)の生活を維持しているのに、何でフランスでは35時間で人並みに生活できて、週末は楽しんでバカンスは2ヶ月、っていうのが成り立つのか、不思議です。

オブ・アラップという、世界的に有名な構造設計事務所に就職した同級生がいるのですが、彼女が就職後、数年東京で働いて、そのあとロンドンに転勤になりました。彼女によると、オブ・アラップ・ジャパンでは、他の設計事務所と同様に、締め切り前の徹夜徹夜は当たり前、仕事に追われる生活だったということですが、ロンドンに行くと、そんなことは考えられない世界だ、といいます。CAD入力の女性が風邪で休みなので、締め切りが延びます、っていうのも当たり前だそうです。もしかして、フランスやヨーロッパでは、移民とか、ものすごく低賃金であまり人がやりたがらない仕事をしてやっと生活をしている、という人達がたくさん存在して、ヨーロッパ人の生活を支えているのでしょうか?

日本では今、格差社会という言葉がよくマスコミにも出てますけど、それでも日本の格差っていうのは小さく、全体的に底上げされているのでは無いでしょうか。教育も皆受けている。友人が言うには、日本人がフランスに遊びに来てくれたら、例えばピアノを弾いて、といえば、何か弾ける人がとても多いことに改めて気付くといいます。フランスでは、ピアノを弾く家庭では弾くけど、弾かない家庭はまったく弾かない。きっと、教育やあらゆる生活レベルに関して、日本はかなりの水準なのではないでしょうか。それを、大勢が維持していくために、みんな一生懸命働いている、という風に思えます。

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